現場指導レポート#7:アジリティトレーニング

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 アジリティAgillityとは敏捷性(機敏に動く)という意味です。バレーボールは狭いスペースの中でボールを落とさないというタスクがあり、必要な体力要素の1つです。昨日は学生へホップドリルと方向転換のドリルを指導しました

 アジリティ能力は”競技の特異性が出る体力”と私は考えています。一般的な体力向上を目的とするこのオフシーズンではどちらかというと優先度は低めかなと。でも「アジリティは継続的にやってほしい」という監督の要望があり、今年は早い段階から導入しています。トレーニング計画にはアジリティトレーニングの導入として「スピードトレーニング」と「スタートドリル」を実施しています。(スピードトレーニングに関しては現場指導レポート#5 「オフシーズンのトレーニング」に投稿しています。)

 今回はアジリティトレーニングの基本的な”考え方”をご紹介します。

●アジリティトレーニングの考え方

 冒頭でも触れた通り「アジリティ」とは敏捷性の能力であり、多くのスポーツ競技で必要な体力要素の一つです。本来の考え方は「何らかの刺激に対して、知覚的・認知的に意思決定をし、加速、減速、方向転換(COD:Chage of direction)を伴う動作を素早く、正確に行う」というものです。そこで、アジリティの能力を高めるためには、選手が以下の条件をクリアできるようなプログラムのポイントをまとめてみました

  1. 外からの刺激がある
  2. 刺激に対して自分の体をどう動かすかという意思と行動(随意運動)ができる
  3. 加速ができる(どんな状況でも)
  4. 減速ができる(方向転換を適切なタイミングで行うために)
  5. 方向転換の技術がある
  6. ①~⑤を素早く、状況に応じて正確に実行する

 一般的に知られているアジリティ(敏捷性)のトレーニングといえば、よく目にするのがラダーやミニハードル、マーカーなどの用具を利用したドリルですが、アジリティを上記の概念とするならば、少し目的から外れる部分があることがわかります。

●「クローズドドリル」と「オープンドリル」を区別する

 クローズドドリルとは予め予測可能な、設定された条件の中で動くドリルのことです。つまり、ラダーやコーンなど用具を用いてタスクをこなすドリルはクローズドドリルに分類されます。オープンドリルとは、ランダムで予測ができない刺激に対して、選手自ら、状況に応じて意思決定を繰り返し行動することを要求するドリルを指します。

 パフォーマンス改善のためには最終的にオープンドリルでのトレーニングが大事なことは想像できると思います。究極のアジリティトレーニングは競技それぞれの技術練習がこれに相当します。技術練習が高度であればあるほど、アジリティ能力の要求は高まり「選手自ら、状況に応じて意思決定を繰り返す」という難易度は上がります。

●段階的なプログラムを設定しておく

 このような考え方から、最終的にはオープンドリルでの能力改善が必要です。文献には「その前段階で動きの基礎となるフットワークや加速(スピード)や減速のスキル習得も選手によっては獲得させておく方が良い場合もある」との記述がありました。当然、チームの中にはクローズドドリルが必要な選手も存在します。チーム競技はトレーニングを個別に設定することが難しいところもありますが、だからこそ選手個々の能力把握やニーズを分析したり、トレーニング計画を立てて、成長の見通しを立てておくことは大事かな、と思います

まとめ

 『選手自ら、状況に応じて意思決定を繰り返す』・・・スポーツにおいて同じ状況は起こりませんから、選手は”失敗”することの方が多いです。体力トレーニングも技術トレーニングも多くの”失敗”の中から”成功”を経験し、選手自身がその”成功”の体験を認知するこことが大事だと思っています。

参考文献:チーム競技のための連続的なアジリティトレーニング:コーンやラダーからスモールサイドゲームへ:NSCA JAPANVolume 29, Number 7, pages 26-34 /Tomás Mota,1 M.Sc.  José Afonso,2 Ph.D.  Mário Sá,3 M.Sc.  Filipe M. Clemente,4、5 Ph.D.

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この記事を書いた人

現場での活動を通して、スポーツについて思うこと、選手と指導者、チームとの関わり方、目標とする大会へ向けての準備(コンディショニング)について書いています。バレーボーラーの日頃の活動の+αに繋がれば幸いです。

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