練習前のウォームアップ、練習後のリカバリーとしてそれぞれストレッチングを入れています。どちらも全員で行う形でプログラムしています。ストレッチングも様々なやり方や目的があります。今回は高校のバレーボール部で行ったストレッチング指導でドリルを選択する時のポイントと現場指導の実際について書いてみました
●ストレッチングの選択
「競技で発生しやすいケガを予防する」という観点からドリルを選ぶのも1つの方法です。バレーボール競技は腰痛(いわゆる腰痛症)、膝の痛み(ジャンパー膝)、肩の痛み(インピンジメント症候群)を訴える選手が多いです。これらのケガの予防を考慮して、競技動作で負担がかかりやすく、パフォーマンスにも関係する筋群の柔軟性や筋が作用する関節の可動域を改善する目的で、主にお尻周り(股関節)、胸周り(肩甲胸郭関節)、足関節(下腿)の動きを改善するようなドリルを選んでいます。
ストレッチングの種類はウォームアップ時はアクティブ(動的)ストレッチング、リカバリー時はスタティック(静的)ストレッチングが中心としています。トレーニング係が向かい合わせに、その場で3〜4列になって実施しています。
●プログレッションエクササイズを目指して
ストレッチングの動作がその場でうまくコントロールを習得できれば、同じ動作でも移動しながら行う方向で実施させたいと考えています。動作に移動が含まれれば活動量、バランスや動作コントロールのタスクが増えます。最終的にウォームアップはストレッチングに拘らず、様々な要素を取り入れた”動きのエクササイズ”として発展させウォームアップの質を高められればと考えています。いずれにせよ個人の技術習得の能力や理解度にもよるので、導入できるタイミングを見計らいながら(できれば試合期に)進めています。
●現場指導の実際
残念ながら、動作は時間経過とともにこちらが求めているものとズレていきます。その軌道修正を「根気強く、繰り返し教えていく」ことが指導現場で一番の正念場。選手たちは教えられたことを”やっている”つもりなんだと思うのですが・・・一通りトレーニング動作を確認していましたが、一番修正が必要だったのが今回は最初のストレッチングだった、というわけです
修正すると「これが正しいと思ってやっていた・・・」という素直な声を挙げてくれました。動き方の違いに気づくと体を支える部分が一気に”苦手な部位”へ移動するので、最初は体がバグるのですが、それが大事で。自分の感覚とこちらが目的とする感覚の違いに気づいて、修正していくのが大事。期待はせず、また次回もチェックして教えるくらいの気持ちでいます
まとめ
「動きづくり」は関節を動かし筋肉は伸ばすので「ストレッチング」という表現も含まれています。単に筋肉を伸ばすという感覚ではなくどちらかというと「エクササイズ」です。ケガをしにくい選手はそもそも動きの真似がうまいし修正能力が高い傾向にあります。できればもっと早い段階(小学高学年、中学生)で、「動きづくり」と捉えてみるとストレッチングも”正しく”実施できたらパフォーマンスにも影響するんじゃないかなあ・・と想像します。”筋力の発達(増大)には筋線維や筋断面積の増大という筋そのものの発育変化だけでなく、神経系の発育発達も影響してくる” また ”体力・運動能力を発揮する(そしてそれをある枠組みの中で捉えようとする)際などには理解力と集中力などの影響も多少なりとも生じてくる*1” 。最近、小学生の子供達のバレーボールする姿を見る機会が増え、納得しています。
<参考文献>
*1)日本アスレティックトレーニング学会誌 第 4 巻 第 1 号, p- 9 , 2018.