パーソナル指導レポート#2:中学生アスリートのパーソナル指導

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月に1回程度、コンディショニングを学びに来てくれる中学生アスリートがいます。出会った時は中学2年生だった彼も、この春から高校生。会うたびに身長が伸び、体格が大きくなっています。今回はパーソナル指導の様子です。

【内容】

● 競技特性を考慮する

● 発育・発達を考慮する

● コミュニケーションの中で「学ぶ」

●競技特性を考慮する

 競技種目はアーチェリー。私もオリンピックの映像くらいしか触れることのない競技なので、彼の練習状況やコーチからのアドバイス、本人の要望や考えを聞きながら指導内容を考えていきます

 立位姿勢で、静的な競技ですが、成長に合わせてどうやらハンドル(弓の持ち手)の重さや弦の弾性が強くなってきているようで、道具に負けない体幹筋のスタビリティ(安定性)が必要だということは理解しています。

 とはいえ、体幹部を支える足部や地面に”踏ん張る”ためには足部機能や股関節周囲筋群がしっかり機能することが大事です。本人は元々が扁平足。合わせて成長期の真っ只中なので、股関節は硬く、体幹はまだまだ弱く、肩周辺は非常に柔らかい。成長に合わせて道具を調整できるスポーツのメリットや面白さなども特性の一つだと感じます。

●発育・発達を考慮する

 以前、コーチの方から「身長が伸びると感覚がズレて、いい時もあれば悪い時があってこの時期は波がある」と聞いたと話してくれました。確かに、この時期は急激な骨の成長でコーディネーション能力や固有感覚器*の変化に合わせるのが難しくパフォーマンスが不安定になるという、成長期特有の配慮が必要です。相手に合わせてプレーする対人スポーツとは違い、自分の感覚や身体機能が影響する競技だし、個人競技ならではの繊細なアドバイスは非常に興味深いですね。

*固有感覚器:体の各部の位置や動きをコントロールする深部感覚。筋・腱・関節を通して動きを感覚的に感じ取る。

 論文にも『神経筋コントロールと動的な関節安定性が同時に改善することにより傷害リスクを低減できる(NSCAジャーナルvol.31No.3)』と示してあるように、個人差が大きく、不安定な時期だからこそ、単純な動作の中で自分の体をうまく動かすような身体学習を、あえてこの場では取り入れるようにしています。

 そこで今回は片足でバランスを取るようなドリルや関節を動かしながら姿勢をコントロールするようなドリルを実施しました。足部機能を高めるとバランスがとりやすくなることや、さらにお尻周りの筋肉を使うことによる安定感やどこに意識を向けるとバランスがとりやすいのか、掴んだ感覚を「言葉」でアウトプットすることで理解を深めているようでした。

●コミュニケーションの中で「学ぶ」

 私との時間の中だけでは当然ですがトレーニング効果を得ることはできません。私がこの時間の中でできることは、競技パフォーマンス向上のために、選手年齢やレベルに合わせて、本人の感覚的な部分を共有し、動き方や課題を克服するためのトレーニング方法を教える事くらいです

 しかしながら年齢関わらず、そこには本人の意志があり、目的があり、要求があるはずです。ここを訪れて来る人達はみな、その時点では動機が漠然としていることが多いように感じます。お互いのコミュニケーションの中から具体化(あやふやだった方向性や欲求に気づく)し、自分の身体の状態からトレーニングをどのように取り組み、目標に向かうのかという考え方を養う(学ぶ)場も若年層のアスリートにとって有益なのかなと思います。

 今日はトレーニングとはどういうことか、という事を伝えました。「継続すること、訓練すること」です。彼は「(ここに来て教わる事を)続けてやって見ますね」と言っていました。

 本当に当たり前で些細な事ですが、意外と言われないとやらない、また与えられた事で満足してしまう選手は多く見受けます。それも含めて、考えるとはどういうことなのか、成長する機会となればいいなと思います。

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この記事を書いた人

現場での活動を通して、スポーツについて思うこと、選手と指導者、チームとの関わり方、目標とする大会へ向けての準備(コンディショニング)について書いています。バレーボーラーの日頃の活動の+αに繋がれば幸いです。

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