#107 アスリートの貧血:その②
先日、食事や栄養学専門の先生の講義を受けた時一番口にされていた言葉は 「食事は楽しいもの」 あなたは食べることが、好きですか? スポーツもそうですよね。 「楽しい・好き」って気持ちに気づくことで 人間は行動を変えることができるんだと思いました。 前回よりも詳しく、「貧血」についての情報を まとめてみます。 参考資料:医師が教えるアスリートの健康情報「アスリートと貧血」 http://f-athletes.jp/download/pdf/170620_anemia.pdf
【 内容 】
- 貧血とは
- アスリートの貧血
- パフォーマンスへの影響
- 貧血の診断
- 貧血の治療
- 貧血予防の食事
【 1.貧血とは 】
貧血とは、酸素が体に十分行き渡らず、酸欠状態になることで 様々な症状が現れることです。 酸素は、血液の中にある赤血球の中のヘモグロビンが、肺で酸素を受け取り、 全身に運搬しています。酸素が体の隅々まで行き渡ることで健康を維持しています。
貧血を引き起こす疾患はたくさんありますが、多くは鉄欠乏性貧血です。
ヘモグロビンの原料は鉄を含むヘムとタンパク質のグロビンで構成されています。
鉄は食事で摂取されて、消化管から吸収されますが、
吸収率は10%程度と低いため、不足しやすい栄養素といえます。
成人の体内には3〜4gの鉄があり、65%はヘモグロビンの鉄、30%程度が
”貯蔵鉄”として、肝臓や脾臓に蓄えられています。
しかしながら、鉄が体内で代謝、再利用として使われるにもかかわらず、
供給が減ってしまうと”貯蔵鉄”が底をついてしまうことになります。
ヘモグロビンを作るための鉄が不足してしまうために
鉄欠乏性貧血になってしまうのです。
参考:川原貴「女性アスリートの貧血」産科と婦人科 別冊 2015:82;271-6
【 2.アスリートの貧血 】
※ 鉄欠乏の主な原因 ・食事による鉄の摂取不足 ・消化管からの鉄の吸収不足 ・鉄の喪失量(月経過多、消化管出血など)の増加 ・成長や妊娠による需要の増加 ・赤血球の溶血(ランニングや剣道など足底を繰り返し 打ちつけることで赤血球が壊れてしまう)【 3.パフォーマンスへの影響 】
・酸素不足になるので、持久力が低下する ・だるくなったり、疲れやすくなる ・競技パフォーマンスに影響(力が出せない) ・陸上長距離、持久系記録競技では記録低下が現れる ・普段のトレーニングがきつい球技系競技は、異変に気づきにくい *一生懸命取り組んでも記録が伸びない、以前のような調子がでないという時期が続くときには貧血を疑ってみましょう。【 4.貧血の診断 】
自覚症状があったり、思い当たる症状が続く場合は、 積極的に医療機関で受診して診断を受けましょう。 診断は血液検査で出る数値を参考にします。 ・ヘモグロビン(血色素)濃度:男子13g/dl、女子11g/dl以下は貧血 ・赤血球数(RBC) ・ヘマトクリット値(Hct)など
また、定期的な血液検査は貧血の発見にとても有効ですが、
正常値は個人差があること、 季節やトレーニングによっても多少変動するので、
少々の数値の変動に一喜一憂はできないようです。
【 5.貧血の治療 】
鉄欠乏性貧血の治療の主なものは、 「鉄剤(増血剤)の服用」 + 食生活の改善(再発予防) 日常生活でも貧血の症状がある場合には、トレーニングを注視しなければならないので 注意が必要です。その場合には単に鉄が不足しているだけでなく 鉄貯蔵量が枯渇している状態も考えられるので 鉄剤による鉄補給によって貯蔵量を回復させ、食事で補えるように食生活の見直しを同時に行います。
鉄剤の注射が行われることがありますが、即効性を求めて注射を続けることは危険です。
鉄剤注射を 繰り返すと鉄過剰となり、肝臓障害などを起こすことがあります。
鉄剤は経口投与が基本であり、鉄剤 注射は医師が必要と判断した場合のみ受けるもので、
安易な回復手段として考えてはいけません。
『 サプリメントに頼り過ぎない ! 』
国際オリンピック委員会(IOC)は、「18歳以下のジュニア選手は医学的に必要と された特別な場合を除き、サプリメントを使用するべきではない」という声明を 出しています。 サプリメントはあくまで食事の栄養を補うためのものですから、 サプリメントに頼るのではなく、 まずバランスの良い食事を心がけましょう。