#109 選手のパフォーマンスを高める方法

魚住 廣信先生が1994年のNSCAに投稿されている 「コンディショニング再考」を参考に 私も改めてコンディショニングについてまとめてみたいと思います。   私が社会人になり、最初に受けた講習会は魚住先生のリンパマッサージの講義だったと思う。 大学で独学で勉強した知識しかなく、それこそ今からいろんな勉強をしていこう、と夢を膨らませていた時期だった。 魚住先生は日本ではトレーナーの先駆者。著書でお名前は十分周知していた。そんな先生に 「ストレッチングとストレッチの違いがわかるか?」 と問われて・・・緊張で頭が真っ白になり何も答えられなかったことを今でも鮮明に覚えている。  

【 内容 】

  1. コンディショニングとは
  2. コンディショニングの3つの要因
  3. コンディショニングの考え方
  4. まとめ
 

【 1.コンディショニングとは 】

「試合に勝つための全ての準備」 日本スポーツ協会アスレティックトレーナーの養成講習会ではコンディショニングの共通言語としてこのように定義されている。 コンディショニングとは試合までに積み上げる準備の要因のこと。
一昔前までコンディショニングといえば、試合のための調整としか考えられていなかった。「コンディショニング不足」という言葉も試合の結果が悪かった時や、十分に練習ができずに試合に臨んだときに使われる。確かにそれは単に試合に対する体調の良し悪しを意味するに過ぎない。
  一昔前・・・からどのくらいの指導者がこういう認識を改めてくださっているか定かではないけれど コンディショニングという言葉のイメージはこの文章が大きいかもしれない。 コンディショニングの本当の意味は、 スポーツパフォーマンスを向上させるための要因(主な因子・ファクター)であり、 最終的に、試合前の状態の良し悪しはそれまでの「コンディショニング」プロセスで決まる。  

【 2.コンディショニングの3つの要因 】

魚住先生はコンディショニングの要因の主なものを『4つの柱』と書かれていた。 1つ目は身体的な要因: 筋力・スピード・持久力・柔軟性・調整力など実際のトレーニングや練習に関わるもの。 2つ目は防衛的な要因: カラダの抵抗力や免疫力。風邪をひきやすい、暑さ寒さに弱い、お腹がすぐ痛くなる・・など。 3つ目は精神的な要因: 緊張して上がりやすい、練習は強いが試合に弱い、周囲のプレッシャーに弱い、枕が変わると眠れない・・など。 4つ目は食事・栄養の要因: 偏食、栄養のアンバランスやトレーニングに見合ったカロリー摂取などの問題。 現在、日本スポーツ協会の方では、防衛的な面と栄養面を1つにして「環境的な要因」としている。
  コンディショニングとは、体系立てられたプログラムに則り、4本の柱を確実に太くて強いものにしていくことである。これは家を建てることと同じである。太くて強い柱を使えば、強い地震が来ても十分耐えられ長持ちする。
  わかりやすいことをおっしゃるなあ・・・と思うフレーズです。 選手のカラダを強くし、パフォーマンスを高めるためには これらの要因(コンディショニング)は必要不可欠だということが 端的に示してあります。  

【 3.コンディショニングの考え方 】

監督、コーチは技術指導が専門である。 コンディショニングについてある程度の知識や情報は持っていても、内容も多く複雑で情報も多い。 限られた時間の中で、どう取り入れるかは正直難しいことだと思う。 その競技でうまくなりたい、結果を出したいという思いの方が選手も監督も強いに決まっているから コンディショニングで言えば「身体的な要因」つまり技術練習に多くの時間を費やしてしまうでしょう。 トレーナーのようなコンディショニングの専門家の基本的な考え方は 「カラダは資本」 これに尽きます。なぜなら、スポーツは身体を酷使することだから・・ 技術練習にばかり偏ってしまうと、
選手の身体的な能力のバランスが崩れ、カラダや動きは硬いが筋力とかスピードだけは極端に強くなったりする。 もっと広い目でコンディショニングをまたトレーニングを考え、バランスの取れたカラダ作りを基礎にすべきである。
  そのためには、目先ばかり見て単発でコンディショニングを取り入れても目に見える効果はなかなか現れてこないでしょう。 「トレーニング計画」が必要になります。 練習時間や強度と合わせて、コンディショニングの他の要因をどう取り入れていくか、計画が継続の助けとなります。 その計画をさらに効率的に立てる材料が 「体力テスト」などの現状を知るチェックです。  
コンディショニングは単に身体的なトレーニング・プログラムではなく、コンディショニングの4本の柱について、何をすべきか( What )どのようにするのか( How )、なぜするのか( Why )いつやるのか( When )選手と指導者のコミュニケーションを重ね、プログラムに取り組む前に理解が必要不可欠である。
  指導者、そして競技経験のある保護者などの大人が 「(技術)練習量に差が結果に出る」と経験・認識しているように トレーナーも、コンディショニングの重要性は 「経験」「正当性のある理論」で訴え続けています。   そのために、トレーナーも現場の方で理解をしていただいて、 関われる場を作って、 「勝つため」の様々な努力がまだ多くあることを「経験」と共に 伝えていかねばならないですね。  

【 まとめ 】

コンディショニングの要因には身体的、防衛的、精神的、栄養面という4つの大きな柱がある(現在は身体的、環境的、心理的の3つの要因ともいう)。 「コンディショニング不足」とは4本の柱が試合までのプロセスで然るべきレベルに到達していないことを指す。 部活動は学校生活の一部であるため、時間に制限があるため、どうしても技術練習に偏りがちだが コンディショニングの他の要因をうまく生活の中に組み込んで 『家』のように太くて強い柱(カラダ)を作ることで、外的プレッシャー(練習のストレス)に 耐えられるようになれば、さらに質の高い練習内容を与えることができるようになる。 これが、ケガの予防であり、パフォーマンスの向上に繋がる。 コンディショニングの専門家を、目的に合わせてうまく活用していただければと思います。  

【 編集後記 】

20年以上前の文章ですが、基本も基本の考え方は何ら変わらないし むしろ、無駄なくまとめてあって、凄い。   実際にコンディショニングの取り組み方はチームによっても変わるので 指導者と十分にコミュニケーションを取ることが大事だと思っています。   でも、指導者側にそのような認識や必要性がなければ トレーナーは不必要な存在だということも感じながらも活動を続けています。 出過ぎてもダメだし、主張しなさすぎても、ダメ。。 ・・・・。 コンディショニングをそのチームの現状にあった形で プログラムを組むまでには膨大な知識の習得と理解と技術に多くの時間を費やします。 魚住先生のこの投稿に、心なしか勇気づけられました。   立ち止まらず、進み続けるしかない。