Special Colum /vol.3#2:大学院生コーチとしての学びと着眼点(後編)

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●筆者が考える”支援する”コーチングとは 

 数値的な話はさておき、私は指導現場において重視している点は、ボールだけでなく「選手の動きを見ること」と「選手やチームがどうなりたいのか?を選手とコーチの双方が共有すること」だ。なぜなら、ボールは選手が何らかの意図を持つ事によって動くからである。球技は、選手がボールを扱うことで状況が変化する。選手は瞬時に変化する状況を認知し、予測し、判断し、実行する。つまり、コーチが見るべきは結果としてのボールの行方だけでなく、選手の動き、そしてその動きを行った背景など、内面的なものまで見る必要があると考えている。

 だからこそ、さまざまな視点でコート内外の選手を観察することが必要であり、観察から多くの気づきを得るためには人の動作・心理・マネジメント等々、コーチもコーチング以外の知見を得ることが必要不可欠であると感じている。(あの人はおそらく次の曲がり角で左に曲がる、この人は2回チョキを出したら必ずグーを出すなど、日常生活でも観察してしまうことはそろそろやめたいところだが…)

 上述したコーチングの目的を達成するためには、チームおよび選手の目標は何かを具体的に設定する必要があり、これらを達成するためには選手とコーチが目標を「共有すること」が大事ではないかと考えるようになった。大学院に入学するまでは、私が考える正解像に選手やチームを当てはめていた。このやり方では目標を共有した気になっているだけで、一方的なコーチングであることから、目標に対する支援ができていないことを実感した。

 選手の「こんなプレーをしたい」チームの「こんな攻撃や守備をしたい」「日本一になりたい」などの目標を共有し、これらを踏まえたうえで「こんなやり方はどうだろうか」と提案してみると、選手から「やってみると○○を意識した方がうまくいきそう」とか「やってみると私の中で○○な発見があったからこうしようと思う」などの返答があり、これらからまた新たに課題を発見しては解決することが多々あった。

 このように、選手とコーチの双方がコミュニケーションを図りながら、その目標に向かって一緒に進んでいくことが重要なのではないだろうかと考えるようになった。だからこそ、選手との関係性を築くため(距離感は大事にしつつも)、バカになって笑わせるときもあれば、親身になって悩み事を聞くこともある。選手が成長したい!と思ったときに気軽に質問や相談をしやすく、穏やかで近寄りやすいコーチになれればと日々試行錯誤を繰り返しているところである。

 最後に、大学院での学びやこれまでのコーチングについて振り返り、形にする機会をいただけたことで、「コーチングは選手ありき」であることを再認識することができた。これまでに多くの学びを得てこられたのも選手の皆さんのおかげであることを常に感じ、選手とともに成長しながらスポーツ界の発展に寄与できればと思う。 

本稿が皆様の学びに少しでも役立てられることができれば幸いである。

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この記事を書いた人

【保有資格】
バレーボールコーチ3
【経歴】
2012-2015 東福岡高校バレーボール部 主務/2015-2019 駒沢大学男子バレーボール部 学生コーチ/2019-2023 ヴィクトリーナ姫路(19-21:オフェンス担当コーチ、21-22:ブロック&ディフェンスコーチ、22-23:マックスバリュ・ヴィクトリーナ コーチ)/2023-2025 鹿屋体育大学 女子バレーボール部 学生コーチ(大学院生)

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