奄美大島の宇検村にある田検中学校の職業講話で講師として「トレーナー」についてリモートでお話をさせていただきました。以下講話の内容は、学校から提示があったものです。
<内容>
・トレーナーとは?(トレーナーの専門性)
・トレーナーを目指したきっかけ
・仕事の内容と流れ
・やりがい、苦労すること
●トレーナーの専門性
スポーツに関わる「トレーナー」って何者なのか?
華やかなスポーツの舞台の裏で支える役割なので、その仕事内容は知られていなくて当たり前です。そういう意味でも人に伝える機会を与えていただけたことは感謝だなと思いました。
トレーナーそれぞれで提供できるサービスが違うので、今回は専門性を「スポーツ医学」と「トレーニング論」の2つに分けて話をしました。
「アスレティックトレーナー(AT)というスポーツ医学の知識や情報が専門のトレーナー、そして「S&C(ストレングス&コンディショニング)」というトレーニング理論の知識を持つトレーナーがあることを伝えました。他にも治療家(鍼灸士、柔道整復師士など)でケガの治療が行えるところからスポーツに携わるトレーナーもいます。「目指すトレーナー像」によって進路選択が変わること、その人それぞれの進路選択で、働き方やサポートの内容が変わることを話しました。
※トレーナーの専門性については、コラム「アスレティックトレーナー(AT)との関わり方」もご参照ください
中学生は「ケガをしている選手にケアやサポートをする人」というのがトレーナー像のようでした。
●トレーナーを目指したきっかけ
私はトレーナーになりたくて体育大学を選んだわけではなかったけれど、結果的に体育大学への進学がきっかけでした。初めてトレーナーという方に出会ったのは、高校の時に病院で。また大学では治療家(師匠)との出会いが決定的なきっかけでした。いずれにせよ「ケガを治すのは自分自身の体を変えること」という教えは自分の軸となっています。
人との「出会い」って大きいですよね。中学生はこれから自分で少しづつ自分の道を選び、環境を変えていく中で多くの人と出会っていくことと思います。自分の興味があることを、出会った大人が背中を押してくれたりキラキラした目をして話をしてくれたら・・・たぶん私はそういう姿に憧れたし、そういう大人に出会えたことが一番勇気になったんじゃないかと振り返ります。出会いを大切に、ありきたりな言葉ですがそういうメッセージを受け取ってくれてたら嬉しいです。
●仕事内容と流れ
「普段の練習のサポート」と「試合でのサポート」について、やる事や目的が違うことをそれぞれ話しました。
普段の練習のサポートは、まず選手や監督・コーチから今の状況をヒアリングしてコミュニケーションの中でその日の自分の仕事を見つけていくことが多いです。トレーナーはコンディショニングの専門家なので、このスポーツ現場によばれている意味は考えて、時には提案していくことが仕事だと考えています。
実際に、試合のサポートは「チームや選手がこれまで練習などで時間をかけて準備してきたものを引き出す」事を意識して行なっています。宿舎でやること、会場でやること、試合中でやること、試合後にやること・・・それぞれを時系列でまとめて話してみましたが、振り返ると結構、試合期間はハードです。
少し生徒達に「当初のトレーナーのイメージから、話を聞いて変わったこと」をこちらから尋ねてみました。
” トレーナーがトレーニングの指導をしたり、コンディション(体調)をどう整えるかということを教えたりするとは思っていなかった” という事をある男の子が教えてくれました。
”選手や監督とコミュニケーションを取って仕事をするということは知らなかった” ということも教えてくれました。
なるほど。

●やりがい、苦労すること
やりがいしかない仕事です。「仕事してて辛いことがありますか?」という質問に対して、私ははっきり「ないです」と答えました。しんどいこともうまくいかないことも含めて、全てが楽しいです、と。
苦労することは、どんなに力を尽くしても思うような結果に繋がらないし、うまくいかないことの方が圧倒的に多い、ということ。1番難しいのはこの仕事で報酬を得ることがなかなか難しいということです。指導者がボランティアでやって当たり前という日本のスポーツの文化が変わらない以上、現状はそんなに大きく変わらないということを伝えました。「トレーナーでは稼げないから、やめた方がいい」と散々言われ続けてきたこと、そしてそれは今も大きくは変わらないことを話しました。
こんな不安定で確実性もない仕事について、人前で、ましてや未来ある子供達の前で話をする機会など一生無いし、求められることも無いだろうと思っていました。こういう機会もまた、人との繋がりで頂いたものです。
伝えられるメッセージは、私はこの仕事に誇りを持っているし、好きなことは諦めずに続けていく中で人と出会い仕事が広がることは、どんな仕事でも同じじゃないかな・・・という私の経験だけです
どんな仕事にせよ、子供達には未来という未確的なものに向かって、勇気を持ってチャレンジを続けてほしいなと思っています。