シーズンの変わり目なので、トレーニング内容の変更を指導しました。バレーボール競技においてジャンプ力は特徴的な体力要素ですが、高校生のフィジカル強度によっては足の怪我(膝や足部の疲労骨折、下腿の骨膜炎など)の発生リスクが高くなるので、ジャンプのトレーニングの導入は状況を見ながら進めています。
今回はバレーボール選手へのジャンプトレーニングの取り組み方や課題、問題点を挙げながら現場指導の様子を記録します
<内容>
●女子選手の体幹筋
●高校生のけが予防
●ジャンプトレーニングは必要か
●女子選手の体幹筋
男子の選手と比較して、相対的に筋力不足を感じるのは体幹筋です。ジャンプの高さは腕の振り込みによるエネルギーが体幹部へ偏位することで地面へ踏み込む力(地面反力)が鍵となります。体幹(胴体)が弱いと腕を振り込んだ時、体幹部でエネルギーリーク(力の漏れ)が起きると、踏み込みが不安定になり、空中へ上がる方向が変わってしまいます。空中を移動するボールに自分の体を合わせなければならないし、さらに両手を挙上すると想像以上にコーディネーション能力が必要です。その主要な働きは体幹筋が影響すると考えています。
今回は高さを出すという目的よりも「上半身と下半身をコントロールしながら強く、連続で跳ぶ」その場でのタックジャンプや「上半身をしっかり使って強く床を踏み込み、遠くへ跳ぶ」両足跳びや横方向へのホップを取り入れました。腕の動きが入ったり連続動作をさせると、動きがバラバラな選手が多いことも観察できました。
こういう動作がパッとできないのはただの経験の不足もあると思います。できないことは、いい意味で伸び代だと捉えて、継続して動きの変化(効率のよい動作習得)見ていきたいと思います。
●ジャンプによるケガ予防
バレーボールのケガはポジションによっても部位によっても異なります。男女ともに膝と腰、肩のオーバーユース(使い過ぎ)による障害が多い(野田ら,2017)。特にジャンプ着地時にかかる衝撃をうまく吸収できなかったり、相対的に衝撃に耐えうるだけの筋力がなかったりすると、シンスプリントや膝の外傷、腰痛の発生も見られます。シンスプリントの発生年齢のピークは16歳。これは高校へステージが変わった時に練習量が急に増えたことが原因だと言われています。また、体幹筋の筋厚変化率が小さい選手は着地動作時に体幹筋が活動しないため、下肢の障害が生じやすい動作になっている(村本ら,2021)との報告があります。
特にバレーボールはボール練習の中にジャンプが含まれるので、トレーニング負荷・量の設定は重要です。シーズン中はトレーニングのボリュームも減らすのでコンディション的に控えた方が賢明かもしれません。
特にチーム競技は個々の体力や技術力が違う集団に「同じトレーニング」を提供しなければならないところが難しいなと思います。
●ジャンプトレーニングは必要か
必要か必要でないか、といえば必要だと考えています。ポイントは対象となる選手の体力と課題に見合ったドリルと量を適切に選択できるかどうかです。ジャンプは高く跳べば跳ぶほど能力は上がりますが、その分着地の衝撃は大きくなりますからその辺の配慮とリカバリーにも目を向けられる選手教育も必要です。それらの要因をクリアできない環境ならばアップに含める程度か必要ないかもしれません。
いろんなトレーニング(運動)の経験を積ませることで身のこなし方、基礎的な筋力を徐々に身につけるためにも「やらない」という選択ではなく適度な刺激を入れ続ける中で、「解剖学的に正しく動かせる」ようなフォーム習得や筋力を身につけながら、関節をしっかりとコントロールできる選手を育成することが最優先だと改めて思いました。
●まとめ
バレーボール競技においてジャンプは特異な体力要素ですが、跳ぶ技術も影響します。ただし競技中に繰り返し行われるジャンプ動作は着地時の衝撃が身体への負担となるため、跳ぶ技術以前に「着地の安定性」とそれを支える筋力やさまざまな関節のコントロールがケガの予防となります。ジャンプトレーニングの導入は、ケガのの要因を減らし、動きを再構築することが、結果的にエネルギーリークを抑え、トレーニング効果の獲得のためのコンディショニングとして優先すべきことかもしれません。
引用文献:1)女性バレーボール競技者のポジションによる 傷害発生の特徴─ スパイカー,セッター,レシーバーの3つのポジションによる検討─野田 優希,古川 裕之 ,松本 晋太朗,小松 稔, 内田 智也 ,石田 美弥,佃 美智留,藤田 健司,理学療法科学 32(5):621–625,2017.2)ジャンパー膝を有する大学女性バレーボール選手の体幹筋厚変化率と着地動作の関係 村本 勇貴,来間 弘展,体力科学 第 70 巻 第 6 号 395-399(2021) DOI:10.7600/jspfsm.70.395